大和がDeNA入り決定的。今季の成績をどう見るべきかー来季の大和、DeNAの展望
選択肢のあるFA選手に「選んでもらった」のは初めてではないだろうか。
阪神からFA宣言していた大和が新天地にDeNAを選んだ。条件面で阪神・オリックス・DeNAはほぼ横並びだったが、その中で「環境重視」という大和が選んだのがDeNAだった。
DeNAは大和に遊撃のレギュラーを確約しているわけではないという。今季の遊撃にはフルイニング出場の倉本が座り、二塁には柴田が台頭した。DeNAの二遊間事情については先日更新した記事がある。
さて、大和の獲得によってDeNAの二遊間はどう変わっていくのか。また、大和は期待通りの働きを見せてくれるのだろうか。検証していきたい。
大和の来季展望を読む
①打撃
大和は今季、右打から両打へと転向した。今季の「.280」という打率はその成果なのだろうか。各スタッツを下に検証してみたい。
左右別成績
打率 | 対右打率 | 対左打率 | |
2017 | .280 | .270 | .298 |
2016 | .231 | .191 | .286 |
2015 | .225 | .222 | .229 |
2014 | .264 | .258 | .280 |
2013 | .273 | .262 | .297 |
これまで大和は「右投手」を苦手としていたことがはっきりと見て取れる。「対左>対右」の傾向は毎年続ている。つまり、今季の打率改善は対右打率の改善とほぼイコールだといえるだろう。スイッチヒッター転向によって右投手に対する苦手意識が克服された、ということか。次の指標を見てみよう。
BABIP
フェアグラウンドに飛んだ打球がヒットになる確率を表すこの指標。どれだけ「運が良かったか」を表す指標だ。野手の場合は選手の走力等によって傾向が表れるため、他選手との比較ではなくその選手の平均値と比べてどうであるかを確認する。今年の大和は自身の平均値と比べてどうであったか。
打率 | babip | |
2017 | .280 | .327 |
2016 | .231 | .271 |
2015 | .225 | .231 |
2014 | .264 | .263 |
2013 | .273 | .277 |
過去4年、右打時代のBABIPを見ると、大和の水準値は.270前後であろう。そこで今季のBABIPを見てみると、.327という数字。これは今季の大和は相当「運が良かった」ということだ。打球方向だったり強さだったり、「ヒットになりやすいところ」へ打球が飛んでいたというのがわかる。水準と比べてBABIPが高い場合、翌年以降は成績を落とす可能性が高いと言われる。
では、大和は来季以降打撃成績を落としてしまうのだろうか。ここで考えるべきは、大和が「スイッチヒッター1年目」つまり左打者1年目であるという点だ。次の指標を見てほしい。
左右別BABIP
打率 | 対右BABIP | 対左BABIP | |
2017 | 0.280 | 0.325 | 0.338 |
2016 | 0.231 | 0.258 | 0.342 |
2015 | 0.225 | 0.260 | 0.265 |
2014 | 0.264 | 0.296 | 0.316 |
2013 | 0.273 | 0.293 | 0.330 |
大和の左右別BABIPを算出した。本来の計算式は「BABIP = (安打-本塁打)/(打数-本塁打-三振+犠飛)だが、手元のデータの関係で今回は犠飛の影響を除いている。そのため少々の誤差が生まれた。ただ、傾向として今季の大和は「対左BABIP」は過去水準と比べて特別高い成績ではないことがわかる。今季のBABIPを引き上げたのは、「対右BABIP」だ。そしてこれまでの「対右」は右打席だったのに対し、今季の大和は左打席に立っている。言わずもがな、左打者は1塁到達時間が縮まり内野安打が増える。(実際に増えたかどうかはデータがなく確認できなかった。)また両打ちの打者が右打席と左打席で傾向を異にするのもよくある話だ。
つまり、大和の左打者としてのBABIP水準は新しく考慮する必要があるということだ。過去と比べて数値が高いからと言って、それをそのまま用いることはできない。
まとめ
一見すると高いBABIPに支えられた打率上昇にも思われるが、スイッチヒッター1年目という状況を考慮すると数字の見え方は変わる。来季以降も今季の水準を維持する可能性はあり、また左打者としての成長が更なる飛躍へと導くかもしれない。
②守備
阪神では遊撃、二塁、中堅とチーム事情によって様々なポジションを守った大和。特筆すべきは、どこのポジションでもリーグ屈指の守備力を見せたことにある。そのユーティリティ性によって、DeNAは他の二遊間選手との兼ね合いで様々な選択肢を得た。大和の守備力に懸念すべき点はない。あとは、どう使うかだ。
二塁大和・遊撃倉本
フルイニング出場を果たした倉本をレギュラーとした場合、大和は未だ固定されていないセカンドに入ることが考えられる。他の二遊間選手と比べて倉本は打撃に強みを持っており、今季の得点圏打率はリーグ2位の.342。9番打者として50打点をマークした。ただし守備がネックで、今季のUZR-17.0は断トツの最下位。守備範囲が狭く、崩れた体勢からの送球技術に劣る。大和獲得に乗り出した背景にも守備への懸念があったのだろう。
遊撃大和・二塁柴田
これができれば強い。その為には柴田の打撃向上が不可欠だ。柴田はDeNAの二遊間選手としては珍しく守備を売りにできる選手。その守備力で首脳陣の信頼を得て、今季はポストシーズンにフル出場するまでに台頭した。二塁手には他にも石川や田中らが控えるが、守備力を考えるとそれなら遊撃倉本・二塁大和のほうがマシという印象。柴田が打率・出塁率を改善させてガッチリと二塁のレギュラーを固めることができれば、長年の懸念だったDeNAの二遊間も安定する。
まとめ
可能性が高いのは上記のどちらか。倉本を二塁へ回すということもできるが、倉本にとって経験の薄いポジションである。倉本は守備を補って余るレベルの打撃を見せてレギュラーの座を確保したいところ。また柴田も打撃改善によってレギュラー奪取と行きたい。
結論
大和はスイッチヒッター2年目となる来季がカギ。今季の成績がフロックでないことを証明してほしい。また大和の加入によって二遊間の層は格段に厚くなり、それに伴って競争も激化する。大和、倉本、柴田だけでなく、石川や白崎、山下など各選手が刺激を受け、チームで生き残るために切磋琢磨していってほしい。