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横浜DeNAベイスターズの二遊間問題を検証する

今季の横浜DeNAベイスターズを振り返ってみよう。

巨人とのデットヒートの末に勝ち取った2年連続のCS出場。文字通りの「泥試合」の末に突破したCS 1stステージ。球団19年振りの日本シリーズ出場を決めたCS ファイナルステージ。そして、かつての仲間である内川聖一の前に屈した日本シリーズ

なんとドラマチックな終盤戦だったろうか。「弱くても」とDeNAベイスターズと言った方が正確かもしれない)を応援し続けてきたファンからすればなんとも夢心地で、「やっぱり、勝てるっていいなあ」なんて思った10月、11月だったのではないかと思う。

それでもやはり、球団も選手もファンも、求める瞬間は「ペナントレース制覇」。

その為に今オフ、DeNA阪神からFA宣言した大和の獲得に乗り出している。石井琢朗の退団以来、DeNAは常に二遊間をウィークポイントとして抱えていた。

そこで、当記事では「横浜DeNAベイスターズの二遊間問題」と称して現状の分析と来季の展望を考えていきたい。

 

 

今季の二遊間を振り返る

まず、今季のDeNAの二遊間を振り返ってみよう。

遊撃手

倉本寿彦(26)
試合数 打席 打数 安打 二塁打 三塁打 本塁打 打点 盗塁 犠打 犠飛 四球 死球 三振 併殺打 打率 長打率 出塁率
143 539 507 133 27 1 2 50 3 9 1 18 4 102 10 .262 .331 .292

 

3年目にして全試合フルイニング出場を成し遂げた正遊撃手。今季の遊撃手は倉本1人しかいなかった、という訳だ。打者としては「9番倉本」でクラッチヒッターぶりを発揮。得点圏打率.340は巨人・マギーに次ぐセリーグ2位と、投手が犠打でランナーを進めたあとの打者として結果を残したといえる。

ではどこに文句が出るのかというと、ご存じの方も多いとは思うが、守備だ。

近年、守備力(守備範囲)を評価する指標として市民権を得つつある指標「UZR」(DELTA社算出)。

選手の守備力を相対評価で数値化するその守備指標で、倉本は12球団最下位の「-17.0

」をマークしてしまった。1位の西武・源田が「+21.5」であるから、その差は38ポイント。セリーグ1位の巨人・坂本が「+10.6」であり、ブービーはヤクルト・大引の「-8.6」。言葉は悪いが、ぶっちぎりの最下位である。数字にすると他球団の遊撃手に見劣りするというのが現実だ。(遊撃手は名手と呼ばれる選手が多いこともあるが)

ただし、現在のチーム状況で1年間遊撃手を守り通してくれた貢献は計り知れない。セイバーメトリクスをかじった人は「WARが」と言うけれども(WAR=そのポジションの平均的選手が出場した場合と比べてどれだけ勝利に貢献したかを表す指標)、それでも今季DeNAの遊撃を任せられるのは倉本しかいなかったように思う。まだ3年目26歳。来季以降もまた成長した姿を見せてくれるはずだ。

 

二塁手

DeNAの問題は、やはり二塁手にある。

今季二塁手としてスタメン出場した選手は7人。

選手名 試合数
柴田 47
田中浩 42
石川 40
エリアン 6
宮崎 5
山下 2
雄馬 1

 

前半戦は田中浩と石川、後半戦は田中浩と柴田、終盤に入ると柴田が定着したという印象。ただ石川は怪我で離脱するまで、田中浩は相手先発が左投手の日を中心にスタメン出場を続け、50試合出場した選手がいないという状況だ。

 

柴田竜拓(23)
試合 打席 打数 安打 二塁打 三塁打 本塁打 打点 盗塁 犠打 犠飛 四球 死球 三振 併殺 打率 長打率 出塁率
88 248 215 50 8 0 1 11 1 11 2 17 3 50 2 .233 .284 .295

 

来季の正二塁手筆頭候補はこの柴田だろう。アマチュア時代は遊撃手として鳴らした柴田の1番の売りはその守備力。ルーキーイヤーの昨年は二塁守備に不慣れな様子も見せていたが、今年は安定した守備でDeNAファンを安心させてくれた。本職が遊撃手だけに倉本と遊撃の座を争う可能性もあるが、今のところは二塁手として出場することになりそう。CS、日本シリーズでは全試合にスタメン出場し、ラミレス監督の信頼を印象付けた。

ネックなのは打撃。打率.233、OPS.579は改善の余地あり。打撃の確実性と出塁率を高めることができれば、来季以降一気に主力選手として活躍してくれるだろう。

 

田中浩康(35)
試合 打席 打数 安打 二塁打 三塁打 本塁打 打点 盗塁 犠打 犠飛 四球 死球 三振 併殺 打率 長打率 出塁率
66 175 154 31 3 1 1 20 2 8 0 11 2 25 4 .201 .253 .260

 

チームで2番目にスタメン出場の多い二塁手がこの田中浩康。昨オフにヤクルトからの引退勧告及びコーチ就任要請を蹴って自由契約に。若い選手の多いDeNA内野陣にあって、ベテラン内野手の存在感は確かだった。しかし残念ながら攻守ともに全盛期の安定感は見られず。特に守備では名手と言われた過去の姿とは程遠く、凡エラーも目立つなど物足りなさがあった。既に年齢も35歳を過ぎ、1年1年が勝負。来年の結果次第では引退も見えてくるだけに、奮起を期待したい。

 

石川雄洋(31)
試合 打席 打数 安打 二塁打 三塁打 本塁打 打点 盗塁 犠打 犠飛 四球 死球 三振 併殺 打率 長打率 出塁率
63 192 167 41 7 0 2 11 1 6 3 12 4 41 4 .246 .323 .306

 

忘れてはいけない。横浜ベイスターズ時代からチームの主力として活躍し、良くも悪くもここ10年の「ミスターベイスターズ」な選手がこの石川。今季は前半戦はレギュラーとして主に相手先発が右投手の時に出場を続けていたが、7月頃に足の怪我で離脱。後半は二軍暮らしが続いた。過去には打率.294(2010)や、出塁率.357(2013)という成績を残した実績を持つ。近年は度重なる怪我の影響もあり満足いくパフォーマンスを示せていないが、打者としては最も期待できる存在ではないだろうか。前半戦1位で折り返した2015年の4月には、「石川が初回に打つと勝てる」というジンクスが全国ニュースで取り上げられたりもした。懐かしい。

ただし石川も守備に課題を抱えており、万全のコンディションで臨むことができたとしても、ラミレス監督が攻守どちらを重視するか、また柴田の打撃が改善されるかどうかによって出場機会が変わってくるだろう。なんにせよ、2013年(打率.275、出塁率.357)レベルの成績を再び残すことができれば。まだ31歳。老け込む年齢ではない。

 

ここまで挙げた倉本、柴田、田中浩、石川に加え、山下幸輝(24)、飛雄馬(26)ら一軍出場経験のある選手、またルーキーイヤーの今季2軍で経験を積んだ松尾大河(19)や狩野行寿(23)らの飛躍も期待される。

 

来季の二遊間を予想する

来季の二遊間がどうなるか。これは既に獲得に乗り出している阪神・大和の動向によって大きく変わってくる。

 

大和(30)

試合 打席 打数 安打 二塁打 三塁打 本塁打 打点 盗塁 犠打 犠飛 四球 死球 三振 併殺 打率 長打率 出塁率
100 252 232 65 6 0 1 16 2 1 1 18 0 37 5 .280 .319 .331

 

大和の魅力は何といってもその守備にある。現役時代の名手・井端和弘に「大和が1番上手い」と言わしめるほどの守備力は、本職の遊撃だけでなく、二塁、また中堅でも発揮される。二遊間の守備力に不安を持つDeNAにとって、大和のFA宣言は願ってもないチャンス。複数年契約を軸に獲得を目指しているという。また、プロ12年目にしてスイッチヒッターに転向した昨季は打率.280をマーク。左打席でも右打席と遜色ない成績を残し、来季以降の展望も明るい。大和を獲得することができれば、遊撃での起用か、あるいは二塁での起用か、少なくともスタメンに名を連ねることは間違いないと思う。

 

さて、大和を獲得できなかった場合の二遊間は、おそらく今季と同じような起用になるだろう。倉本が遊撃で固定され、白崎が後を追う。二塁は柴田を中心に石川らが併用されることになると考える。

では、大和が獲得できた場合はどうか。

まず、大和を二塁と遊撃どちらで使うかという問題がある。倉本を143試合フルイニングで使ったことを考えれば、二塁・大和、遊撃・倉本という起用になると考えるのが妥当であろう。倉本はアマチュア時代から遊撃を本職とし、高校時代には三塁の経験もあるが二塁の経験は乏しい。二塁・倉本、遊撃・大和の形は考えにくい。

やはり、倉本、大和、柴田の3名のうち打力と守備力を兼ね備えた2名が二遊間を担うのが基本線。考えられるパターンとしては、今季の通り「二塁・柴田、遊撃・倉本」。さらに「二塁・大和、遊撃・倉本」。そして「二塁・柴田、遊撃・大和」。可能性は低いが、「遊撃・柴田、二塁・大和」の可能性もある。石川や白崎のコンディション次第ではそこに割って入る可能性も、もちろんある。なんにせよ、大和の獲得はチームにとって確実にプラスである。「二塁・柴田、遊撃・倉本」以外の選択肢が与えられ競争が生まれるという点だけでも、その効果は大きなものとなるだろう。

 

まとめ

優勝へ向け、現有戦力の奮起に期待したいところではあるが、若手の山下、柴田、松尾らはまだ時間がかかるという印象。やはり大和を獲得することができれば二遊間の起用に幅が生まれ、倉本の負担減にも繋がってくる。オリックス阪神との争奪戦になるが、ここはなんとか獲得にこぎつけてほしいところだ。