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全ての掲載内容は、全てのアスリート及びチームに対する深い尊敬の下で著述されています。

横浜DeNAベイスターズ発足から6年。TBS戦士は意地を見せる時だ

DeNA」という聞きなれない会社がベイスターズを買収したのが、もう6年も前になる。ガラケーからスマホへと潮流が移る直前の時期で、世間一般には「モバゲー」の名前のほうが知れ渡っていた。

球団買収の報道が出たとき、ほとんどのファンは「大丈夫か?」と思っただろう。ベイスターズファンを公言していたやくみつる氏は「DeNAが親会社の間はファンを辞める」とまで言った。新球団名は「横浜モバゲーベイスターズ」なんていう報道がされた日に「やめてくれよ…」とため息をつきながら嘆いた記憶も懐かしい。

しかし、結論から言えば、DeNAによる買収は「大成功」だったといえる。観客動員は右肩上がりで今シーズンの稼働率は96%を越え、ファンクラブ入会者数も急増。そして何より、5年目でCS出場、6年目で日本シリーズ出場を果たした。買収後しばらくは頑なに「横浜」と呼び続けたファンも「DeNA」という呼称になれ初め、チームも若い選手の台頭によりTBS時代を知る選手は少なくなっている。

特に今季は「暗黒時代」を支えたTBS戦士が続々と戦力外通告を受けた。

2007年に入団し、2011年は177.1イニングで5勝15敗、2012年に151.2イニングで7勝10敗。「ローテを守れる。」それだけで暗黒エースの名をほしいままにした高﨑健太郎。

2009年に入団し、新人で開幕スタメンを勝ち取ってその開幕戦で猛打賞。その後も内野全て守れるユーティリティプレイヤーとして活躍した山崎憲晴。

「ゾノアイ」と評された選球眼による高い出塁率で暗黒期にはリードオフマンを担い、DeNAでは代打の切り札として数々の名場面を生み出したイケメンヒットメーカー、下園辰哉

早大から1位指名で入団しながらもスタメン定着はならず。応援歌がとても好きだったのだが、久々に代打で出てきたと思ったら「港男」の代打テーマを歌っている間に初球凡退で退いた。それが私が最後に見た彼の姿だ。松本啓二郎。

TBS時代からのファンにとってはおなじみの、「あの日々を思い出せる」選手が消えていく。強くなったことを実感するとともに、寂しさは募るばかり。というか、チームを支えているはずの生え抜き30代がどうしてこうも次々と消えていくのだろう。

 

19年ぶりに出場した日本シリーズのベンチ入りメンバーに、TBS時代を知る選手は筒香嘉智と梶谷隆幸、そして田中健二郎、須田幸太がいた。

ベイスターズにはTBSを知る選手があと3人いる。2011年入団の荒波翔。2010年入団の加賀繁。そして2005年入団、石川雄洋だ。

この7人の中で「TBS時代のユニフォームが似合う選手」を挙げるとすれば、それは加賀と石川だろう。他の面々はDeNA後に1軍で活躍するようになった。

加賀は2010年のルーキーイヤー、ほぼ1年を通してローテーションを守り通してくれた。防御率は3.66。勝敗は、3勝12敗である。翌年からは中継ぎとして、いまいち信頼しきれないがそれでも貴重なブルペンの一角として投げ続けてくれている。バレンティンキラーの異名で名を売った時期もあった。右のサイドハンドでは三上朋哉がいるが、加賀の変則フォームはハマれば強い。来季以降も中継ぎ、またワンポイントとして要所を締めてくれるだろう。

石川はある意味ベイスターズを象徴する存在である。不器用で、不格好で、気持ちの上下が大きく、それでいて誰よりもひたむきで慕われる。石川雄洋について語ろうとすれば一本記事が書けるので、それはまたの機会に取っておきたい。石川は2009年に遊撃手としてスタメン定着すると、2010年には打率.294、36盗塁の活躍。しかしその守備には不安がつきまとった。DeNA後はセカンドとして出場を続けるが、ここ2年は怪我の影響もあり満足いく成績を残せていない。若手の柴田らの台頭もあり、生き残りが苦しい状況でもある。

それでも、悲願の日本シリーズでベンチ入りメンバーを見たとき、そこに加賀が、石川がいないのを見たとき、私は悲しかった。寂しかった。「あのベイスターズが強くなったんだ」という実感は、やはりそこに「あの時代」を知る選手がいてこそだと思った。それは広島に黒田が、新井が、石原がいたように。

同じようにベイスターズの悲願の瞬間には、石川が、加賀が、個人的な希望を言ってしまえば、村田修一がいてほしい。彼らが「TBSベイスターズ」と「DeNAベイスターズ」を繋ぐ架け橋となり、その存在があの日々を想起させ、そしてそれが目の前の歓喜と美しいコントラストを作って暗黒の記憶さえも輝かせるような、そんな一瞬を夢に描いている。

 

TBS戦士よ、もう一度立ち上がれ。そして「横浜ベイスターズ」の意地を見せてくれ。

そう願いを込めて、また今夜も夢を見る。