DeNAがBリーグ・川崎ブレイブサンダースを傘下に。その思惑とは
発足2年目のシーズンとなったBリーグ。東地区4位の川崎ブレイブサンダースは東芝のバスケットボール部を母体とし、Bリーグ発足に伴ってプロ化した。東芝はオーナーとしてチームを支えていたが、近年の本社経営悪化に伴ってスポーツ事業再編の流れが生まれていた。
そんな川崎に声をかけたのがDeNA。チームを買収、来季からは新しく設立する完全子会社がチームの運営権を握ることが発表された。
横浜DeNAベイスターズの成功でスポーツ界の中でも名前を売っているDeNA。今回のBリーグ・川崎買収にはどのような思惑があるのだろうか。
川崎ブレイブサンダースの概要
選手全員が東芝社員という企業チームから、Bリーグ発足に伴いプロ化。
記念すべき1年目となる16-17シーズンは序盤から快進撃を続けて中地区優勝。チャンピオンシップでも決勝へ進むが、栃木ブレックスに敗れて準優勝に終わった。
17-18シーズンの今季は東地区へ入る。第10節を終えて4位。アルバルク東京、ジェッツ千葉、サンロッカーズ渋谷の後塵を拝している。
得点ランク2位のニック・ファジーカス、3Pシュート数1位の辻直人らを擁する攻撃的なチームカラーでチーム得点数は18チーム中2位。
ホームアリーナは川崎市とどろきアリーナ。
DeNAにとってのスポーツ事業
スポーツチームを所有する企業の多くは、広告宣伝としてチームを持っていることがほとんどだ。しかしDeNAはあくまでも「事業」の一つとして球団経営に取り組む。横浜DeNAベイスターズは見事黒字化を果たし、本社の業績上昇へ貢献するまでに成長した。
2016年度DeNAの決算報告を見てみよう。
全体の営業利益に占めるスポーツ事業(横浜DeNAベイスターズ、横浜DeNAランニングクラブ)の割合は約5%。5%というと大したことが無いように感じられるが、横浜スタジアムの改修やベイスターズの躍進によってこれから額としても割合としても伸びていくことが考えられる。
さらに先日DeNAは新事業「ベイスターズ・スポーツ・アクセラレータ」の開始を打ち出し、スポーツ産業への注力を前面に押し出している。
川崎買収の思惑とは?
そしてここで川崎ブレイブサンダースの買収を打ち出した陰にはどんな思惑があるのか。
先程の決算報告を見てもらえばわかりやすい。野球のシーズンはだいたい4月ー10月。1Q、2Qの業績は良好だが、シーズンオフになる3Q、4Qには落ち込んでしまう。逆にBリーグはだいたい10月ー5月に開催され、ちょうど野球のシーズンオフを埋めてくれる。つまりDeNAはBリーグ参入によって1年間スポーツ事業から収益を上げることができる、というわけだ。
本音を言えば横浜に本拠地を持つ横浜ビー・コルセアーズを所有したかったのだとは思うが、東芝の経営難によって「たまたま」同じ神奈川県内の川崎ブレイブサンダースのオーナー権を得るチャンスが転がり込んできた。そこでBリーグへの参入を決めた、というところだろう。
なお、ベイスターズ前球団社長の池田純氏が本件についてこのようなツイートをしている。
ちっくしょ〜〜〜2017年8月、バスケ買収、本件の存在気づかせてしまった紙面。2016年10月にベイスターズ社長を退任して以来D社とまったく関係ないので誤認してもらいたくないが、私は個人でだったので、どうしても折り合わない条件があって断念せざるを得なかったが、残念。がんばってもらうしかない。 pic.twitter.com/qvva5TF2j2
— 池田純 (@ikejun) 2017年12月6日
池田氏が言うように、DeNAもこの紙面を見て、Bリーグに川崎ブレイブサンダースという「ビジネスチャンス」が転がっていることに気が付いたのかもしれない。
DeNAがチームを買収する効果としては、Bリーグの参入によって、ベイスターズファンがブレイブサンダースに、ブレイブサンダースファンがベイスターズに興味を持つようになるというものもある。それぞれのシーズンが重ならず、野球界が寂しくなった頃にバスケットボールが盛り上がる、ファンも1年中スポーツを楽しめるという意味で大きなシナジーを生むだろう。
かくいう筆者も早速ブレイブサンダースに心惹かれ、いつ「Bリーグデビュー」しようかと画策しているところだ。
川崎ブレイブサンダースの財務状況
ただ、川崎から収益を生もうと考えると、不安が無いわけではない。
見づらい画像で申し訳ないが、これを見ると川崎の「入場料収入」「物販収入」は18チーム中最下位であることがわかる。そしてスポンサー収入は3位。スポンサー収入頼みの経営状況ということだ。そして今回東芝が川崎から手を引くことで、頼みの綱だった6億以上のスポンサー収入には期待が持てない。DeNAがそれだけの額をスポンサーとして支払う訳はない。あくまでもDeNAはここで収益を上げようとするはずだ。その為には入場料、グッズ収入で売り上げを挙げていく他ない。
DeNAはBリーグという新興市場で「入場料収入」「物販収入」を引き上げるためにどんな施策を練っているのだろうか。それとも、それを成し遂げる施策が、自信が既にあるから、今回の買収に踏み切ったのだろうか。来季の川崎がどんなアイデアを見せてくるか今から楽しみだ。
まとめ
DeNAが描く「スポーツタウン」構想、そしてスポーツ産業のトップカンパニーになろうとする動きから目が離せなくなっている。岡村信悟横浜DeNAベイスターズ社長が「ベイスターズ・スポーツ・アクセラレータ」発表会見で語った「横浜をスポーツ産業のシリコンバレーにしたい」という言葉は、いずれ「神奈川を」という言葉に変わっていくのかもしれない。
様々な問題を乗り越えて今最も「熱い」スポーツ市場となったBリーグ。そこへ乗り込んでいく今最も「熱い」スポーツカンパニー・DeNAがどんな新しい風を吹き込むか、来季の川崎ブレイブサンダースに注目したい。